ゆるふわな君の好きなひと

 ペットボトルのキャップを開けた由利くんが、薄く開いた口に水を流し込む。

 ゴクゴクと飲み込むたびに動く白い喉をぼーっと眺めていたら、由利くんがペットボトルに口をつけたまま、流し目で見てきた。

 見過ぎだったかな……。

 気まずくなって、膝の上でキュッとスカートをつかんでうつむく。


「練習見てるの、楽しい?」

 落とした視線を落ち着きなく左右にさまよわせていると、由利くんがおもむろにペットボトルを差し出してきた。

 透明なペットボトルの中で、半分くらいに減った水がたぷんと揺れる。それを受け取ると、わたしは小さく頷いた。


「うん。なんか、部活の空気感とかがなつかしいなーって」

「あとでちょっと遊ぶ?」

「え?」

「練習終わったあと少しなら、ボールもゴールも自由に使えるよ」

 ぽかんとした顔をするわたしに、由利くんがにこっと笑いかけてくる。

 わたしもやりたいなって気持ちが見透かされていたらしい。

 何にも考えてなさそうなのに、由利くんは案外わたしのことを見てくれている。

 嬉しくなって頷くと、由利くんの向こうから璃美が速足で近付いてきた。

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