ゆるふわな君の好きなひと
「じゃあ、行こっか。璃美」
わたしと笑い合ったあと、眞部くんが璃美の腕をつかむ。
そうして璃美だけを引っ張って帰ろうとするから、少しびっくりした。
眞部くんの行動に驚いたのは璃美も同じみたいで、彼を見上げてパチパチまばたきをしている。
「え、なんで? 由利くん、まだでしょ」
「圭佑ならすぐ来るよ」
「だったら、待てばよくない? さっき、つーちゃんとも話してたんだよ。四人でどこか寄って帰ろうって」
「そうなんだ。でも、それはまた今度のほうがいいかも」
「なんで?」
怪訝そうに首を傾げる璃美を見て、眞部くんがふっと笑う。
そのとき、着替えを済ませた由利くんが更衣室から出てきた。
ユニフォームを着ているときはキリッとして見えたのに、ひとたび制服に着替えると、ゆるふわでちょっとやる気のなさそうな普段どおりの由利くんだ。
「なんだよ、晴太。まだいたの?」
ペタペタと床に足を引き摺るようにして歩いてきた由利くんが、眞部くんに視線を投げて眉根を寄せる。
眞部くんとその隣にいる璃美のことを少し鬱陶しそうに見遣る由利くんの小脇には、バスケットボールが抱えられていた。