ゆるふわな君の好きなひと

◇◇◇


「紬ー、テストどうだった?」

 テストが終わって筆箱にシャーペンや消しゴムを片付けていると、カバンを肩にかけて帰る準備を整えた咲良が近付いてきた。


「うーん、まぁまぁかな」

「てことは。かなりできたんだね。さすが、紬」
「できたかはわかんないけど……」

 由利くんにテスト範囲を教えたことが、意外に自分の勉強にも繋がっていたらしい。

 どの教科のテストも、「ここ、由利くんと勉強したな」と思える問題が必ずひとつは出てきて。解答用紙がスムーズに埋まっていき、時間があまって見直しもできた。

 由利くんはどうだったかな。そう思ったとき。


「青葉ー。帰ろ」

 ペタペタと上履きの底を引き摺る音がして、由利くんがそばに近付いてくる。


「じゃぁ、わたしは帰るねー」

 由利くんに気付いた咲良はそう言うと、「ダブルデート楽しんで」と小声でわたしをからかってから、先に教室を出て行った。

 だから、デートとかじゃないのに……! 

 そんなふうに言われてしまうと、由利くんんことを変に意識してしまいそうになるから困る。

 そばで待ってくれている由利くんをちらっと見ると、わたしの視線に気付いた彼が不思議そうに首を傾げた。

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