ゆるふわな君の好きなひと

「どうかした?」

「うぅん。テスト、どうだったのかなって」

「あー。たぶん、まぁまぁ」

「まぁまぁなの……?」

「わかんないやつもあった。でも、青葉に教えてもらったとこは完璧と思う」

 ちょっと考えてから、由利くんがにこっと笑う。


「そ、っか」

 わたしも由利くんと一緒に勉強したところはほぼ完璧だと思ったから、嬉しい。

 照れ隠しに鼻先を擦って俯いていると、由利くんが制服のポケットからスマホを取り出した。

 無表情でスマホを弄っていた由利くんが視線をあげて、わたしのカーディガンの袖を指先でつまんで軽く引っ張る。


「晴太たち、もう下降りてるって」

「あ、そうなんだ」

「行こ」

 そう言うと、由利くんはカーディガンの袖をつまんだまま、わたしを教室の外へと引っ張っていった。

 少し伸びているカーディガンの袖を見つめながら、由利くんの後ろを着いていくと、階段のところで彼の指先が離れる。

 踵を踏ん付けた上履きの底をペタペタと鳴らしながら階段を降りて行く由利くんの薄茶の髪が、ふわふわ揺れていて。その後ろ姿を見つめながら、カーディガンを引っ張る指が離れたことを少し残念に思った。

 階段の途中で立ち止まって由利くんの背中を見ていると、わたしの後ろから他のクラスの女子達が三人で話しながら階段を降りてくる。

 顔は見たことあるけど、名前は知らない。

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