ゆるふわな君の好きなひと

「あ、前にいるの由利じゃん」

 わたしを追い越していくとき、彼女達が由利くんに気が付いた。三人組のうちのひとりが、グループから抜けて階段を駆け下り、由利くんのカーディガンの背中をつかまえる。


「ゆーりっ! ひさしぶり。今日暇? テスト終わったし、うちらと一緒に遊びに行かない?」

 カーディガンの背中を引っ張った女子が、そのままさりげなく由利くんの腕に腕を絡める。

 近いな……。

 彼女と由利くんの密着度に引いてしまい、少しだけ、わたしの頬が引きつった。

 だけど振り向いた由利くんは、腕を絡められていることも彼女との距離もあまり気にしていないみたいだ。

 そういうところに無頓着だから、あざとい女子に付き纏われて、付け込まれるんじゃないのかな。由利くんのことがなんだか、心配になってしまう。


「ごはん食べてカラオケ行こうと思ってるんだけど、由利は? ひさしぶりに一緒に遊ぼうよ」

 腕を絡めた女子が由利くんのことを甘えるように引っ張り、誘う。

 ひさしぶりにってことは、一応面識のある子たちなのかな。

 由利くんのことを積極的に誘っているのは、腕を絡めている子一人。なんとなく、その子が由利くん狙いみたい。

 他のふたりは、友達が頑張っている様子をニヤニヤしながら眺めていた。

< 33 / 192 >

この作品をシェア

pagetop