ゆるふわな君の好きなひと

「おれも、カラオケ行く約束してる」

「そうなんだ。誰と? バスケ部の人? だったら、うちらも入れてよ」

 遊びに誘われた由利くんは、腕を引っ張って纏わりついてくる女子に嫌がるそぶりを見せず、普通に会話をしている。

 由利くんは自分から女の子に話しかけたり誘いに行くことはないけれど、基本的には話しかけてくる子達を邪険にしない。

 話しかけてきた子達と親しくてもそうじゃなくても、とりあえず普通に反応を返してしまう。

 だから、女の子達はみんな由利くんの態度に期待するのだ。頑張って押せば、いけるかも、って。


「ねぇ、由利から友達に連絡しみてよ。うちらも一緒に行ってもいいか、って」

 階段を降りたところで立ち止まった由利くんは、腕を絡めてきた女子に、必要以上にベタベタとくっつかれている。

 それを喜んでいるようには見えないけど、逆に嫌がっているようにも見えない。彼女のしたいようにさせている。

 このままだと、彼女たちも一緒にカラオケに行くことになってしまうかもしれないな。

 これまで何度も女子達の誘いに流されてきている由利くんを間近で見てきたせいか、そんなふうに思ってしまう。

 実際に、由利くんが女子の誘いを断り切れなかったせいで、眞部くんと璃美もわたしも全く面識のない女子と遊ぶハメになったことも多々あった。

 眞部くんや璃美は、由利くんのそういうところをいつも苦笑いで許してしまうけど……。

 わたしは面識のない人に愛想を振りまくのは少し苦手。それができないわけではないけど、気を遣うしすごく疲れる。

 できれば今日は、キッパリと彼女達の遊びの誘いを断ってほしいな。

 そう思うけど、階段下で女子に囲まれた由利くんは優柔不断な態度でヘラヘラとしていて。あまり期待はできそうもない。

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