ゆるふわな君の好きなひと
君の不機嫌
璃美や眞部くんと遊ぶとき、結構な頻度でカラオケに連れて行かれる。
眞部くんは声の音域が広くて、歌が上手い。璃美は普通だけど、たぶん歌うのが好き。
だけど由利くんは、カラオケに来ても歌わない。
これまでに何度か一緒にカラオケに来ているけど、曲を入れるところすら見たことがない。
「由利くんて、どうしていつも璃美や眞部くんがカラオケに行くとき文句言わずについてくるの?」
歌もろくに聞かず、ドリンクを飲んだりポテトを食べている由利くんにちょっとだけ顔を寄せると、ずっと疑問に思っていたことを訊ねてみる。
指で摘んだポテトをくわえながら首を傾げた由利くんは、わたしを見て不思議そうに目を瞬いた。
「なんでそんなこと聞くの?」
「なんで、っていうか。由利くんて、カラオケに来ても全然歌わないし。他の人が歌ってても全然興味示さないから。眞部くんなんて歌うまいし、有名な曲歌ってくれたりすると、つい聴き入っちゃわない?」
「んー? 晴太の歌なんて、子どもの頃からしょっちゅう聴いてるし。別に珍しくもなんとも。まぁ、うまいとは思うけど」
由利くんが、映画主題歌として話題になったヒット曲を気持ちよさそうに歌っている眞部くんにちらっと視線を向けて、お皿のポテトに手を伸ばす。