ゆるふわな君の好きなひと
陽が落ちるにはまだ早いし、わざわざ送ってもらうような距離でもないのに……。
意味不明な由利くんの行動に首を傾げながら、彼の背中を追いかける。
「青葉さ、なんで高校ではバスケ部入らなかったの?」
並んで歩いていると、黙って下を向いていた由利くんが唐突に訊ねてきた。
普段はわたしに対してもっと気を許した笑顔を見せてくれるのに、足元に視線を落とす由利くんの表情は固い。
思えば、カラオケを出てからずっとだ。
何かあったっけ……。
考えるけど、眠くないのだとしたら、それ以外に由利くんが無表情になる理由がわからない。
「バスケ辞めたのは、中学のときに膝を痛めちゃったからだよ。部活は好きだったけど、そんなに上手い方ではなかったし。体育くらいなら大丈夫だけど、運動部みたいにハードな練習すると膝が痛くなっちゃうから」
由利くんの横顔を見ながら質問に答えていると、彼がわたしのほうに視線を投げてきた。
由利くんのアーモンド型の目に見つめられて、わけもなくドキリと胸が鳴る。だけど……。