ゆるふわな君の好きなひと
「久我山先輩に助けてもらったのは、その膝のケガのとき?」
「そうだけど……」
由利くんの温度のない声が耳に響いて、すぐにゾワッと心が冷えた。
「そっか。久我山先輩のことが好きだったなら、泉尾さんと一緒に男子バスケ部のマネージャーやればよかったのに」
「マネージャーはあんまり興味なかったから。それに、先輩が好きだからマネージャーになるとか、動機不順だし……」
「やっぱり久我山先輩のこと好きなんだ?」
由利くんが静かな声でそう言って、首を傾げる。
「違……、さっきも言ったけど、久我山先輩に対する好きはファン的な感情だから」
「ふーん。でも、そうじゃないと久我山先輩も困るよね。先輩、去年の終わり頃に彼女できたみたいだし」
「知ってるよ。うちの高校の先輩でしょ」
つい最近、久我山先輩とその彼女が一緒に帰っているところを偶然目撃した。
彼女もたぶん、わたしと同じ北中出身だ。見たことのある、可愛い人だった。
でも、わたしには由利くんがわざわざ久我山先輩の彼女の話を持ち出してくる理由がよくわからない。
それに、由利くんの言葉にはさっきからずっとトゲがある。
まるで、わたしの気持ちをワザと逆撫でしようとしているみたいだ。
ピクッと頬をひきつらせると、由利くんがふっと息を吐いた。