ゆるふわな君の好きなひと
「ショック?」
「なにが?」
「久我山先輩に彼女ができたこと」
「……、由利くんは、わたしになんて答えてほしいの?」
「さぁ?」
「さぁ、って……」
「青葉になんて答えてほしいかなんて、わからない。でも、なんかムカつく。青葉が久我山先輩と知り合いだったってことも、先輩のこと好きだってことも」
少しタレ目気味の、由利くんのダークブラウンの瞳。
普段はぼんやりとしていて何も考えていないように見える彼の瞳が、めずらしく強い眼光を放っているような気がして。ドクッと胸が震えた。
「由利くん、何言ってるの?」
「わかんない。ただ、ムカつくって言ってんの」
そんなこと不機嫌な顔で言われても困る。
わたしのことがムカつくなら、璃美や眞部くんと一緒に帰ればよかったのに。
わざわざ家まで送ってくれるなんて、意味がわからない。
結局、由利くんは、不機嫌な顔のままわたしの家まで着いてきた。
駅から家まで歩くあいだ、わたし達に会話はない。