ゆるふわな君の好きなひと
「じゃぁ、またね」
わたしに向かってゆらりと手を振ると、由利くんはゆっくりとした足取りで駅のほうへと戻っていった。
下を向いて歩く背中が、少しずつ遠くなっていく。その姿が見えなくなるまで見送ってから、わたしもマンションのほうに足を向けた。
由利くんはもうそばにいないのに、まだ少し気持ちが高揚していて。心臓もドキドキ鳴っている。
『おれ、晴太たちといるのも好きだけど、青葉と一緒にいるのも好きだよ』
別れ際の由利くんの言葉が、まだ耳に残ってる。
由利くんにとって、昔から仲の良い眞部くんと璃美は特別。
だけどわたしも、少しくらいは、由利くんの特別に近付けているのかな……。
そう思ったら、また少しだけ心音が速くなるような気がした。