ゆるふわな君の好きなひと

 子どもみたいに叱られている由利くんが可笑しくてクスリと笑うと、気付いた彼がわたしを横目で見て唇をへの字に曲げた。


「由利くんも璃美も、部活頑張ってね」

「ありがとう。つーちゃんは、もう帰るの?」

「うん。わたしはまっすぐ帰宅。帰って数学の課題やるよ。明日、提出のやつがまだ終わってないんだ」

「えらいね、つーちゃん。由利くんも、つーちゃんの真面目さをもっと見習いなよ。勉強でも部活でも」  

 璃美がそう言いながら振り返ると、由利くんは顔を顰めて嫌そうにしていた。


「泉尾さん、この頃、口うるさくなったよね。雰囲気が晴太と似てきた。これ以上、周りに保護者みたいなのが増えたら困るんだけど」

 由利くんが低い声でぼやくのを聞いて、思わず笑ってしまう。

 ちょうどわたしも、由利くんに怒ってるときの璃美と眞部くんの雰囲気が似てるなーって思ってたところだったから。


「あ、つーちゃんまで笑ってる……。晴太に頼まれなかったら、わたしだってわざわざ由利くんに構ったりしないよ。適当で面倒臭いのに」  

 不服そうにプクッと頬を膨らませた璃美が、由利くんを横目に見ながらわたしに抗議してくる。

 その表情が可愛いなと思って笑ったら、由利くんも璃美に優しい眼差しを向けていた。


「あんまり晴太みたいになんないでね。おれは、口うるさくなってきた泉尾さんより、中学のときみたいに可愛い子ぶってにこにこしてた泉尾さんのほうが好きかな」

「可愛い子ぶってって、どういう意味?」  

 璃美が、頬を膨らませたまま由利くんを軽く睨む。


「晴太に好かれようとして、今よりおとなしくにこにこしてたでしょ」

「別に、そんなことないから……!」  

 由利くんにからかわれて、璃美が顔を赤くする。

 だけど、わたしは璃美があっさりと聞き流した言葉のほうが気になった。

 さっき由利くん、すごくさりげなく璃美のことが「好き」って言ってたけど……。そこについてはスルーなんだな。

 そもそもお互いに友達だと思ってるから、ひっかかりもしないのか。

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