ゆるふわな君の好きなひと

 璃美は眞部くんの彼女だし、由利くんの態度を見ていても、彼が璃美のことを恋愛感情で「好き」じゃないってことは、わたしにだってわかる。

 由利くんが口にした「好き」は、友達としての好意。

 それなのに、璃美に嫉妬めいた気持ちを抱くなんておかしい……。

 たぶん、由利くんが女の子に対して「好き」って言っているところを初めて聞いたせいだ。

 わたしはずっと、由利くんにとって特別な存在である眞部くんや璃美のことが羨ましくて。ふたりみたいに、由利くんの特別な存在に近付きたいと思ってた。

 だけどわたしがなりたいのは、きっと、友達としての特別じゃない。

 ちょっとした言葉や態度で由利くんをドキドキさせられるような。そういう特別になれることを望んでる。

 薄々気付いていたけど、はっきり自覚したのは、今まさにこの瞬間。


「また明日ね、つーちゃん」

「明日ねー、青葉」

 立ち去る間際、由利くんがわたしに手を振りながらふにゃっと笑う。

 璃美の隣を気怠そうに歩いていく由利くんの後ろ姿を見送りながら、わたしの心音は少しだけ速くなっていた。

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