ゆるふわな君の好きなひと
「課題に出してた問題集。このクラスで未提出なのは由利だけだぞ。今、提出できるか?」
佐藤先生に呆れ顔で訊ねられた由利くんが、「ムリです」と即答する。
「じゃぁ、今日の放課後出しに来い。提出点も成績になるから、ちゃんと持ってこいよ」
「今日はムリです。全然終わってないし」
「終わらせろ。終わらせてから部活行け。由利、バスケ部だよな。俺の隣の席はバスケ部顧問の松下先生だから、課題提出してから部活に行かせますって言っといてやる」
「え、最悪……」
由利くんがボヤいた後、教室内にクスクスと笑い声が起きる。
後ろの席の男子にからかい半分、励まし半分で肩を叩かれている由利くんは、心底面倒臭そうな顔をしていた。
問題集未提出で部活に出れなくなるとか……。眞部くんに知られたらどやされそうだな。
わたしも、由利くんの薄茶の頭を見つめながらこっそり苦笑いする。
ホームルームの後。由利くんのことを教室まで迎えにきた眞部くんは、彼が部活に出られなくなった理由を聞いてカンカンだった。
三日前に体調不良で部活を休み、次の日も学校を欠席していた眞部くんは、既に全快みたいだ。
由利くんを怒る声にも普段通りのキレがある。