ゆるふわな君の好きなひと
「圭佑、またかよ。そういうのはちゃんと提出しろっていつも言ってんだろ」
目を三角にして説教する眞部くんだったけど。説教されている由利くんのほうは、あさっての方向に視線を向けて、眞部くんの話などまともに聞いていない。
窓の外を見ながら、話の途中で「あ、カラス……」なんてつぶやくものだから、眞部くんは頭から湯気が出そうなくらいにプンスコと怒っていた。
「眞部くん、お疲れ様」
廊下で説教をしている眞部くんに声をかけると、怒られているほうの由利くんが「青葉、帰んの?」とあっけらかんとした声で聞いてくる。
「由利くん、眞部くんの話ちゃんと聞いてあげなよ。課題もちゃんとやってから帰りなよね」
不憫な眞部くんを助けるために、苦笑いでそう言うと、由利くんが首を傾げてわたしの顔をじっと見てきた。
それから、何か思いついたように、ふにゃりと笑ってわたしのカーディガンの袖をつかまえる。
嫌な予感。こういうときの由利くんは、たぶんロクなことを考えていない。
無言で身を引こうとしたら……。