ゆるふわな君の好きなひと
◇◇◇
教室に残って課題をする由利くんと机を挟んで向き合っていると、問題を解く手を止めた彼が、シャーペンの後ろでちょんっとわたしの手を突っついてきた。
「青葉ー、こっからどうするんだったっけ?」
由利くんが問題集をわたしのほうに押し付けるように見せてくる。
由利くんが課題をやっているあいだの暇つぶしに英単語帳を開いていたわたしは、それを閉じて机に置いた。
「どれ?」
「ここ。解いてるうちに、計算合わなくなった」
由利くんが、人差し指の先で、問題集のページをトントンッと打つ。
指の細長い綺麗なその手をしばらく見つめてから、わたしも解きかけの問題に視線を移した。
パッと見た感じ、由利くんの解き方は間違っていない。計算が合わないって、なんでだろう。
ゆっくりと最初から見ていくと、やっとその理由に気が付けた。
「由利くん、ここ、代入する数字が間違えてる」
「どれ?」
机に肘をついてわたしの返答を待っていた由利くんが、急に顔を近寄せてくる。
「あー、そっかー。ありがと」
視線をあげた由利くんが、至近距離でふわっと目を細める。
わたしに気を許してくれてるみたいな笑顔に、胸がドクンと高鳴ってしまう。