ゆるふわな君の好きなひと
「い、いいけど……。この調子で、課題終わる?」
胸のドキドキを誤魔化すように黒板の上にある掛け時計に視線を向けると、由利くんもつられるように同じ方向に視線を向けた。
「あー、結構時間かかっちゃってるね」
「急がないと、部活の時間終わっちゃいそうだよ」
「あー、ね。でも、間に合わなかったらそれはそれでいいよ」
由利くんが、掛け時計をぼんやり見ながら欠伸する。
「何言ってんの。間に合わなかったら、眞部くんに怒られちゃうよ」
「いーよ、いーよ。晴太なんて、どうせいつも怒ってるから」
持っていたシャーペンを机に置いて伸びをした由利くんが、へらへら笑っている。
「よくないよ。ほら、早く続き!」
呆れて眉根を寄せながら、由利くんにシャーペンを押し付ける。
「はーい」と間延びした返事をしながらそれを受け取った由利くんが、机に肘をついて、わたしのことをジッと見てきた。
由利くんの唇は綺麗な弧を描くように緩やかにしなっている。
部活に間に合わなかったら眞部くんにドヤされることは確実なのに、由利くんは、ニヤニヤと……というか、ニコニコというか、機嫌良さそうな表情を浮かべていて。
何を考えているのか、さっぱりわからない。