ゆるふわな君の好きなひと

 机に左半身を預けた由利くんが、怠惰な動きで問題の続きを解き始める。

 力の入っていないふにゃふにゃした字を書き連ねていく由利くんは、どう見てもやる気がない。

 本気で課題を終わらせようとしているようには見えないし、この一年ちょっとの付き合いで、彼が何かに本気を出しているところを見たことがない。

 毎日眞部くんに引き摺られるように連れていかれてるバスケ部だって、由利くんは全く本気でやっていない。

 力を抜いてプレイしても上手いから、いつも持ってる力の50%くらいで出さないらしい。

 付き合いの長い眞部くんは、それが歯痒いみたいで。「真面目に練習したら、圭佑もっとうまくなんのに!」と、事あるごとに由利くんに小言を言っている。

 それでも由利くんは、眞部くんの話を適当に聞き流して、マイペースを貫いている。

 そんな由利くんの「本気」なんて、絶対に本気じゃない。どうせいつもの気まぐれなんだから、ドキドキしちゃったら、そこで負け。

 由利くんが、何かに本気になるわけない。

 由利くんの気まぐれに期待して泣いたり怒ったりしている子たちを、わたしは何人も見てるんだから。


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