ゆるふわな君の好きなひと
計算式を解いていく由利くんの手の動きが、ときどき何か考え込むように止まり、また動き出す。
それに合わせてふわりと揺れる薄茶の頭を見つめていると、問題をひとつ解き終えた由利くんがわたしを見上げてふにゃっと笑った。
「できた。合ってる?」
気まぐれに騙されちゃダメだって思うのに……。
少し上目遣いに見てくる由利くんの顔は、あざと可愛くて、かっこいい。
だから、絆されたくないのに勝手に胸がドキドキしてしまう。
「合ってる。あと2ページで終わりだから、頑張って」
「えー、まだあんのか」
心音の高鳴りを誤魔化すように、由利くんから問題集を奪って少し乱暴にページを捲る。
見開き両ページに問題がたっぷりと控えているのを見た由利くんは、眉間を寄せてぶつぶつ文句を言っていた。
「早く終わらせないと、部活行けないよ」
「もういいよ、部活は。これ終わったら、一緒に帰ろ」
「まだ終わってないよ」
呆れ顔でそう返すと、由利くんがやる気なさそうに机に伏せて、わたしのカーディガンの袖をクイッと引っ張ってくる。
「ていうかさー、もうここまで頑張ったし、あとは答え写してもいい? それか、青葉が代わりにやって?」
甘えるみたいに頼まれて一瞬気持ちが揺れそうになったけど、最後でズルしたら、居残りしてまで付き合った意味がない。