ゆるふわな君の好きなひと
「んー、でもさ、知らない子にあんまり頼れないじゃん?」
首を傾げた彼にそんなふうに言葉を返されて、わたしのモヤモヤなんて由利くんには一ミリも伝わらなかったんだなと、がっかりした。
「彼女になったら、その子は知らない子じゃなくなるでしょ」
ため息まじりにそう言うと、「そっかー」と適当な相槌が返ってくる。
「もういいよ。とにかく、早く課題終わらせちゃおう」
由利くんの本気も、伝わらないモヤモヤも、もうどうでもいい。
ふと見ると、数学の問題集が机から半分ずり落ちている。
それを引っ張って机の真ん中に置き直すと、いつのまにか身体を起こしていた由利くんが、問題集のページに載せたわたしの右手の人差し指と中指の先をゆるく握った。
ドキッとして視線をあげると、由利くんが少し垂れ気味の目を細めて微笑みかけてくる。
周囲の空気まで溶かしそうな甘い笑顔で、つかんだ指先を優しく撫でられて、さらにドキドキした。