ゆるふわな君の好きなひと

「由利くん、課題は……？」

　問題集の上でつかまえられている右手を引き寄せようとすると、由利くんがわたしの指先をつかむ手に力を込めた。

　由利くんの行動なんて、気まぐれでわからないことばかりだけど。今、この瞬間の行動が、今までで一番わからない。

　困惑の表情を浮かべていると、由利くんが「あー、そっか」と、ひとりで頷いた。

　何をひとりで納得してるんだろうと思ったら、由利くんがなんだか嬉しそうにわたしに笑いかけてくる。


「じゃぁ、青葉がおれと付き合う？」

　由利くんがさらっと口に出した言葉に驚いた。

　何がどうなって由利くんの頭の中で「じゃぁ……」という結論が出されたのかわからないし、突然「付き合う？」と問いかけられている意味もわからない。

「付き合って」とか「付き合おう」とかいう、懇願や誘いの言葉ではなくて、わたしに選択権をゆだねてくる疑問系。

　それがあまりに唐突すぎたせいか、指を握られたり笑顔を向けられたりしたときのときめきが一気に全部吹っ飛んで、頭の中が真っ白になった。