ゆるふわな君の好きなひと
「青葉は、おれといるのは嫌?」
黙って考え込んでいると、由利くんがわたしの顔を覗き込むように首を傾げた。
「嫌じゃないよ」
「じゃぁ、おれのこと嫌い?」
「嫌いじゃないよ」
むしろ、好き……、だと思う。由利くんに笑いかけられたらドキドキするし、眞部くんや璃美みたいに由利くんに特別だと思われたいっていう欲もある。だけど……。
「じゃぁ、おれと付き合う?」
由利くんに訊ねられて、すぐに頷けなかった。
もう一度聞かれても、やっぱり由利くんの本気度がよくわからなかったから。
「シンキングタイムがいる感じ?」
答えを出せずにいると、由利くんがわたしの指を握っていた手を解きながら、ゆるりと口角を引き上げた。その笑顔はなんだか余裕そう。
もしわたしが「付き合って」と言った側だったら、好きなひとに返事を躊躇われている状況で笑えない。
何とか作り笑いができたとしても、余裕のなさがどこかに現れてしまうと思う。
だから、今の状況に少しの焦りも感じていないように見える由利くんの表情が、わたしの心を迷わせた。
「とりあえず、これ終わらせちゃおうっと」
困っていると、由利くんが急にそう言って、シャーペンを手に取った。
わたしから問題集に視線を移した由利くんが、シャーペンを指でくるりと回す。