ゆるふわな君の好きなひと

「青葉―、さっそく問1からわかんない。ヒントちょーだい、ヒント」

 由利くんが、やや上目遣いにわたしに話しかけてくる。人に甘えてくる由利くんの態度は、いつもと全く変わらない。

 この人、さっきわたしに「好き」だとか「付き合う?」とか言ってきてたよね……?

 由利くんの勉強モードへの切り替えがあまりにナチュラル過ぎて。その態度がいつもどおりにやる気なさ過ぎて。さっきの告白が急に非現実なことに思えてきた。

「好き」も「付き合う?」の言葉も、なんとなく言ってみただけの気まぐれで、本気なんかじゃなかったのかも。

 からかわれただけなのかなと思うと、チクリと胸が痛くて。変に迷ったりせずに「いいよ」って即答しとけばよかったかな、って少し後悔した。

 それから、三十分ほどの時間をかけて由利くんの課題は終了した。


「はー、終わったー。おれ、すげー頑張った」

「そうだね」

 問題集を閉じた由利くんが、机の上にバタンと倒れ込んで脱力する。


「部活、行けそう?」

 掛け時計を見ながら訊ねると、由利くんが机に伏せたまま視線だけをあげる。
< 77 / 192 >

この作品をシェア

pagetop