ゆるふわな君の好きなひと
「青葉―、さっそく問1からわかんない。ヒントちょーだい、ヒント」
由利くんが、やや上目遣いにわたしに話しかけてくる。人に甘えてくる由利くんの態度は、いつもと全く変わらない。
この人、さっきわたしに「好き」だとか「付き合う?」とか言ってきてたよね……?
由利くんの勉強モードへの切り替えがあまりにナチュラル過ぎて。その態度がいつもどおりにやる気なさ過ぎて。さっきの告白が急に非現実なことに思えてきた。
「好き」も「付き合う?」の言葉も、なんとなく言ってみただけの気まぐれで、本気なんかじゃなかったのかも。
からかわれただけなのかなと思うと、チクリと胸が痛くて。変に迷ったりせずに「いいよ」って即答しとけばよかったかな、って少し後悔した。
それから、三十分ほどの時間をかけて由利くんの課題は終了した。
「はー、終わったー。おれ、すげー頑張った」
「そうだね」
問題集を閉じた由利くんが、机の上にバタンと倒れ込んで脱力する。
「部活、行けそう?」
掛け時計を見ながら訊ねると、由利くんが机に伏せたまま視線だけをあげる。