ゆるふわな君の好きなひと
「教えてくれたら離します」
そこからもしばらく粘られて、由利くんは結局彼女とライン交換をさせられていた。
「ありがとうございます。連絡するので、遊びましょうね!」
「遊ばない……」
「途中まで一緒に帰りませんか?」
「帰らない。ライン教えたら解放してくれるって約束じゃねーの? 言っとくけど、即ブロックだから」
「えー、やめてやめて! ブロックされちゃったら、教えてもらえた意味ないじゃないですか。じゃぁ、せめて校門のところまで……」
「やだ、って」
由利くんがあからさまにテンションの低い声で話しても、一年の彼女は全然めげない。
わたしが体育館の陰に隠れていることを知らない由利くんが校門のほうに速足で歩き出すと、彼女も小走りで追いかけていく。
出るタイミングを失ったわたしは、少しずつ遠くなっていく由利くんと一年の彼女の背中を体育館の陰から無言で見送った。