ゆるふわな君の好きなひと
しばらくすると、由利くんから電話がかかってきた。
体育館の陰に留まったままでいるわたしは、スマホの画面に浮かんだ由利くんの名前をしばらく見つめてから、怠惰な動きでスマホを耳にあてる。
「青葉ー、どこー?」
電話が繋がるとすぐに、由利くんの間伸びした呑気な声が聞こえてきて泣きたくなった。
「青葉、もしかしてまだ教室?」
「違う、……」
涙が滲みそうになるのを我慢して絞り出した声がくぐもる。
「じゃぁ、どこ? 校門で待っててって言ったじゃん」
少し不貞腐れた声で、甘えるみたいになじってくる由利くんに、心の中でつぶやく。
待ってたよ、って。
待ってたけど、遅いよ。
わたしに返事をちょうだいって言ったくせに、他の子につかまってるところとか。その子の誘いをきっぱり断りきれずに曖昧さを残しちゃうところとか。
そういうちょっと優柔不断なところ全部、やっぱり由利くんは由利くんだ。
適当でふわふわしてて、気まぐれで。そんなの全部知ってるし、そういうところも嫌いじゃないけど……。
どうしても悲しくなってしまうのは、一年生の彼女に対する嫉妬心のせい。