ゆるふわな君の好きなひと
由利くんは授業中だいたい寝てるけど、遅刻してくるのは珍しい。
朝はいつも、過保護な眞部くんが由利くんを迎えに行って、ほとんど強引に学校に連れてくるからだ。
それなのに、今日はどうしたんだろう……。
クラスメートたちの視線に紛れながら様子を窺っていると、重たそうにカバンを机に乗せた由利くんが振り向いて椅子を引いた。
そのとき一瞬だけ由利くんと目が合ったけど、空洞みたいな目をした彼の視線は、わたしに気付かなかったかのようにすーっと静かに逸れていく。
気まぐれな由利くんにはそんなのよくあることだけど、今のはわざと逸らされた。なんとなく、そんな気がした。
昨日の放課後、プチッと一方的に電話を切られたあと、由利くんからは何の連絡もなかった。
わたしからも、何の連絡もしなかった。というより、何の連絡もできなかった。
由利くんが怒っていることはあきらかだったし、彼の本気を疑ったことも、告白の返事をする約束をうやむやにしたことも謝りたかったけど……。電話やラインではうまく伝えられる気がしなかった。