幼なじみが愛をささやくようになるまで〜横取りなんてさせてたまるか〜
私の隣に並んで座ると楓ちゃんは足を組み座る。
ソファにくつろぎコーヒーを飲む姿はとても様になっている。この部屋の景色も全て楓ちゃんがいてしっくりくる。
私がこの素敵なソファに座っても何か違う。
私にはこんな生活は出来ないんだろうなぁとしみじみ感じる。やはり楓ちゃんは大人だと思った。
ん?でも陽ちゃんと双子なのに、とふと思い出してしまう。
陽ちゃんは元気で陽気で、私を楽しませてくれるお兄ちゃん。
それとは反対に楓ちゃんは真面目で大人なお兄ちゃん。
お兄ちゃん、なのかな?なんだか陽ちゃんと楓ちゃんは全然違うから私は戸惑ってしまう。
私にとって楓ちゃんはいつでも私のことを助けてくれるヒーローみたいな存在でもあり、口うるさい存在でもある。私のことを考えてくれるからこそ口うるさいのだとはわかっているのだけどいつでも子供扱いでちょっと悔しい。

「私もコーヒーにすればよかった」

「え?」

「だってブラックコーヒー飲んでる楓ちゃんは大人じゃない? 私は子供って感じがするよ。おやつまで出されるとますますお子ちゃまじゃない?」

楓ちゃんはクスクス笑いながら頭を撫でてきた。

「いいじゃないか。紅茶だって美味しいし、このクッキーは俺も好きだ。好きなものを食べたらいいよ。それにひまりと俺は3つしか変わらないんだからそんなに違わないよ」

「でも、陽ちゃんとは歳を感じないこともあるけど楓ちゃんは大人だなって思うよ。だからなんか悔しい」

「ひまりはいつも陽太の話ばかりだな」

そういうと持っていたコーヒーをテーブルに置いた。
私の膝に置かれた手に自分の手を重ねると向かい合うように膝と膝をくっつけられた。

「陽太の話はもういい。俺のことを見て」

今までの楓ちゃんとは何か違う。
真面目な顔でこんなことされるなんて初めて。
私は胸がドキドキし始め、リアクションに困ってしまう。
陽ちゃんなら冗談で私もかわせるんだけど楓ちゃんのことはかわせない。
固まってしまう私のあたまをまた撫でると楓ちゃんは立ち上がって部屋を出てしまう。
私は顔が火照るのを感じ、手で顔をあおいだ。

「久しぶりにやらない?」

そういうと楓ちゃんはゲームを片手に戻ってきた。
小さな頃から遊んでいたテレビゲームで私はよく2人に教わっていたものだ。
協力しながら進むアドベンチャーゲームで一世を風靡したもの。私はもう10年以上やっていない。

「久しぶりに実家に行った時に懐かしくて持ち帰ったんだ。やってみないか?」

「うん!」

さっきまでの空気を変えようと私もわざと明るく声を出した。
私たちは久しぶりにゲームをするが昔みたいにうまく出来ず、ヤキモキしてしまった。

「くそっ! 昔は連打できたのに」

コントローラに文句を言いながらゲームする楓ちゃんはちょっと可愛い。
私も子供の頃のようにできなくてつい声を上げてしまう。
結局2時間もやってしまいとっぷり日が暮れた。

「面白かったね。久しぶりに子供に戻れた」

「そうだな。一緒にやって楽しかったよ」

「さて、夕飯作ろうかな」

私が立ち上がると楓ちゃんも立ち上がった。
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