幼なじみが愛をささやくようになるまで〜横取りなんてさせてたまるか〜
私はどうしたらいいのか困り、そっと逃げるように立ち上がってトイレに行った。
トイレの鏡に映る顔も耳も赤くなっていた。外が寒かったせいではない。
大きく息を吐き、気持ちを立て直してトイレから出ると楓ちゃんは女の子3人に囲まれていた。 
やっぱり……楓ちゃんの周りにいる女の子はみんな綺麗でスタイルもいい。
私が席に戻るのを躊躇っていると後ろから肩を叩かれびっくりした。

「ひまり」

振り返ると陽ちゃんが立っていた。

「相変わらず楓太はモテてんな」

私の視線の先にいる楓ちゃんを見てそういう。

「陽ちゃんだっていつもモテてるでしょ?さっきゲレンデでも注目浴びてたよ」

「そんなことないさ。現に周りに女の子はひまりだけだろ?」

確かに今はそうだけど普段はそんなことないくせに。
陽ちゃんを見ると笑いながら肩に手を乗せてくる。

「重いってば」

ハハハ、と笑う陽ちゃんの雰囲気に少し和まされた。

「おやつ食べたらまた滑るだろ?せっかくきたんだからガンガン滑らないとな」

「もちろん。でも久しぶりだから流石に疲れたよ。筋肉痛が怖い」

笑いながらいうと陽ちゃんは、

「大丈夫。俺はひまりより年上だから今日明日は平気だろ? 仕事サボってのんびり働けば問題なし!」

アパレル関係だから立ち仕事なのにどうするつもりなんだろう、と不安になるが当の本人はあっけらかんとしている。そういうところが陽ちゃんの面白いところ。それに憎めないところ。きっと職場のみんなとも上手くいってるんだろうな、人徳だなと思う。見た目にしても性格にしても陽ちゃんほどの人はなかなかいない。
改めて陽ちゃんを見上げると屈託のない笑顔に私まで笑いが込み上げてきた。
するとそこに楓ちゃんがいつの間にか近づいていて割って入ってきた。

「おい!」

さっきまで周りにいた女の子たちを置き去りにし、私たちのそばまで来ていた。
ふとみると座っていた席にまだ彼女たちはいてこちらを見ているが私と目が合うと睨むように冷たい視線を浴びせられた。

まただ……
いつも2人といると楽しいのにこうして嫌な気持ちにさせられる。
私は床に視線を落とし、彼女たちの視線から逃げた。
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