幼なじみが愛をささやくようになるまで〜横取りなんてさせてたまるか〜
翌朝、ちゃんと寝れなかったのかなんとなく身体が重い。
食堂へ行くとすでに2人は座ってコーヒーを飲んでいた。

「ひまり、こっち!」

手を上げ、陽ちゃんに声をかけられる。
2人に近づくと朝からとても元気だ。

「よく寝れたか?」

「うん。でもなんだか少しだるいかな」

「大丈夫か?」

楓ちゃんは私のおでこを触ってきてビックリして手を押し退けた。
私の様子に驚いた表情を浮かべていたが、小さな声で、ごめんと言っていた。
意識しすぎた私がいけない。今までならこうして楓ちゃんに触れられることはたくさんあった。
けど、昨日の彼女たちと一緒の姿を見てから私の胸はモヤモヤしたまま。喉の奥になにかがつかえているような気がしてすっきりしない。楓ちゃんの顔をまともに正面から見られない。

「ひまり、風邪ひいたか?」

陽ちゃんに声をかけられ、我に戻った。

「大丈夫だよ。でも休んでから滑ることにするね。ふたりは先に滑っててくれる?」

私は笑ってそう言うが楓ちゃんの目をちゃんと見ることができず、なんとなく陽ちゃんの顔を見ながら話した。

「俺も付き合うよ」

楓ちゃんはそう言ってくれるが今は楓ちゃんといるのが辛い。

「大丈夫。時間が勿体無いよ。さ、行ってきて」

私は2人の背を押すと自分の部屋へ戻った。
ふと部屋のドレッサーに写った鏡を見ると、
鏡に映る自分の姿は昨日の女の子たちに比べなんて幼いんだろうとため息が漏れた。
背が高くないのでもともと幼く見られがちだが、ふんわりとしたパーマのかかったミルクティー色の髪の毛に可愛らしい色合いの洋服。大人っぽさとはかけ離れている。もちろん好きで選んだ髪型や服だけれど改めて見ると幼く思えてしまう。
いつもふたりといると自信がなくなってしまう。
子供の頃は隣にいることが普通だったのに大人になるにつれ、釣り合いが取れないことに嫌でも気付かされた。
そう思って学校を変えたりしていたのに久しぶりにこの感覚を味わったせいか落ち込んでしまった。
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