幼なじみが愛をささやくようになるまで〜横取りなんてさせてたまるか〜
窓からゲレンデを見るとふたりがちょうど滑り降りているところだった。
相変わらず綺麗なフォームだなぁと見ていると女の子たちが近寄ってきていることに気がついた。

「あ……」

思わず小さな声が漏れてしまった。

ふたりに近寄り声をかけている姿を見てまたモヤモヤとした気持ちになってきた。
カーテンを閉め、私はその姿を見ないようにした。
それでもモヤモヤした気持ちは収まることなく、私はここでこうしていても気持ちが暗くなるばかりだと思い、ウェアを着て部屋から出た。
ゲレンデに出るとふたりの姿は見えず、私はひとりでリフトに向かった。
今日も中級者コースで滑るが月曜のためか昨日よりも人が少なく滑りやすい。そのためスピードが出ると気持ちがスッキリしてきた。
2本目を滑っていてもふたりを見かけることはなく、上級者コースを滑っているのだろうと思っていた。もし彼女たちと滑っているのなら見たくない。
私が滑っていると目の前ですごい転び方をする人がいた。スピードが出ていたこともあり、慌てて避けるが間に合わずぶつかってしまった。

「ごめんなさい! 大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫。俺の方こそみっともないな。悪かった。君は大丈夫か?」

「大丈夫です」
 
立ちあがろうとすると相手の人は「いてて」とちいさな声をあげていた。

「どこか痛めました?」

「腰を打ったみたいだ。大丈夫だよ」

立ち上がっては見るものの滑って降りるのは無理そうだった。
残り1/3くらいのところまで来ている。
私は彼のボードと自分のボードを手に持つと、下まで歩いて下りることを提案した。

「いや、君は滑れるんだから気にしないでくれ。俺はゆっくり下りるよ」

「無理したらダメです。残りわずかだし一緒に下りましょうよ」

そういうと有無を言わせず私は歩き始めた。
彼は何も言わず、腰を押さえながら私の後をついてきた。
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