幼なじみが愛をささやくようになるまで〜横取りなんてさせてたまるか〜
家に帰り、入浴を済ませ部屋へ戻るとスマホのホーム画面に町屋さんからのメッセージを受信したお知らせが表示されていた。

【今日は突然誘ったのに行ってくれてありがとう。とても楽しかったよ。また是非一緒に行こう】

私もすごく楽しかった。
彼の話は楽しくてあっという間の時間だった。
初めて男性との2人きりの食事なのに気負うことなく過ごせたように思う。
彼の醸し出す雰囲気のおかげだ。

【私もとても楽しかったです。また是非ご一緒させてください。ご馳走様でした】

私が送信するとすぐに既読が付いた。
そしてまたメッセージが届いた。

【本当にまた誘っていいか?】

私は迷うことなくまた返信をした。

【はい。次は私に払わせてくださいね】

【近いうちにまた一緒に行こう】

私は次があると思うとなんだか楽しみに思えてきた。
双子とはまた違った楽しい時間を過ごすことができた。
ふたりにもし相手ができても、私だってこうして知らない人と楽しく食事ができるんだと思えたら少し気持ちが楽になった。
いつかは自分から離れていくふたりと距離をとっていくのもいいかもしれない。
この前スノボに行ってから胸の奥に支えていたものが少しだけ取れた気がした。

その日から町屋さんは2日に一回はメッセージを送ってくれるようになった。
雑談程度のものだが彼から届く何気ないメッセージを待ち侘びてしまう自分がいた。

「ひまりさん。最近楽しそうですね」

唯ちゃんはお客様が途切れたところで話しかけてきた。

「え? そうかな」

「そうですよ。町屋さんと食事に行ってからウキウキしてるように見えますよ。何か進展がありました?」

「ないよ。食事もあの日だけよ」

「そうなんですか? でもなんだか最近楽しそうですね」

食事に行ったのは1回だがメッセージが届いていることは言わずにいた。
唯ちゃんに話してしまうには何もなさすぎるから。
でもこの関係がいいものだと言う自覚は芽生えてきている。
だからもう少し温めたい。
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