幼なじみが愛をささやくようになるまで〜横取りなんてさせてたまるか〜
◇◇◇
陽太から電話が来て驚いた。
ひまりが知らない男と食事に行くと聞いて何も考えられなくなった。
仕事は手につかず、最優先のものだけを片付け俺はひまりの携帯を鳴らした。
何度かけても留守番に切り替わってしまい出てくれない。
何をしてるんだ、と不安に駆られメッセージを何件も送った。それも既読になる気配はなく俺はいてもたってもいられず駅で待ち伏せすることにした。ひまりが帰ってこないなんてことがあったらと思うと背筋が冷える思いだった。
どれだけ待っただろうか。
改札の向こうにひまりの姿が見えた。
ほっとしたのも束の間でひまりの隣には高身長の男の姿があった。
遠目に見ても見栄えのいい男であることは明らかだ。近づくにつれ仕立ての良いスーツを着ているのも目に入ってきた。
人を見る目が培われてきた弁護士という職業柄、彼は決して悪い人間ではなさそうだった。
俺に対しても礼儀正しく、すぐに身分を明かすための名刺も差し出してきた。
男としての魅力溢れる雰囲気はあるが決して軽い感じはしないし人当たりも良さそうだ。
普通に考えたらとてもいい人と出会ったと喜ぶべきところかもしれない。

けれど……
俺はひまりを手放すことはできない。
彼と一緒にいるのを見るだけで怒り狂いそうだった。
ひまりがあの男に笑いかけているのを見て理性を抑えるのが大変だった。
俺の手のひらは無意識に爪の跡が残るほどに強く握っていたようだった。
だからついひまりに強く当たってしまった。彼の好感度がいいからこそつい強く悪口を言ってしまった。
情けないが嫉妬と言わざるを得ない。

ひまりは渡せない。
ひまりのことは俺が1番幸せにしたいと思っている。小さな頃からひまりの幸せが俺の幸せだと思ってきた。
今はこの感情に間違いはないと俺の心が告げている。
このままだと後悔する。
俺はひまりとの今の関係は終わりにしたい。新しい関係を始めたい。

< 41 / 53 >

この作品をシェア

pagetop