幼なじみが愛をささやくようになるまで〜横取りなんてさせてたまるか〜
さて、最後に残ったのは楓ちゃん。
これまでみんなのメッセージを見てきたけれど30件のうちの残りは全て楓ちゃん。
開くのが怖くなるがいつまでもこうしてスルーする訳にはいかない。
楓ちゃんのメッセージを開くと初めのうちはずっと謝罪が続いていた。
町屋さんを知らないのに否定するような言い方をしてしまった、と書いてあった。
その後は私からの返信がないので心配していること、直接話したいことが書かれていた。
“どうしても伝えたいことがある”と最後に書かれていた。

その言葉に何故か胸の奥がドキンとした。
伝えたいこと?

私が既読をつけたことに気がついたのか楓ちゃんからメッセージが届いた。

【体調悪いのか?大丈夫か?】

【大丈夫】

【昨日はごめんな。今日どうしても話したいことがあるんだ】

【今日じゃなきゃダメ?】

私は昨日の今日で楓ちゃんと面と向かって会うのが気まずくて会いたくない。
またクッションにスマホを投げようとしたらすぐに返信がきたことを知らせる音が聞こえた。

【ごめん。どうしても今日話したい。5分でいい。時間をくれないか?】

楓ちゃんがここまで折れないのは珍しい。
私は話したくないが楓ちゃんの切羽詰まったメッセージに押され夕方会うことを約束した。

私は渋々出かける支度をした。
楓ちゃんとだし、車で迎えにきてくれると言うので特におしゃれをしておかなくても大丈夫。
そうは思ってもやっぱり素のままでは行けない。可愛いと思ってもらいたい。
いつものようにメイクし、特にアイメイクに力を入れて泣いたのを気付かれないようにした。
つい、買ったばかりのワンピースを出してしまうと無意識にまだ1回も着て出かけてないのに今日これを出してしまうなんて、と苦笑してしまう。
やっぱり楓ちゃんの前だと思うとだらしない格好は見せたくない。
小さな頃からどんな時もそばにいたんだから今更だけど、それでも楓ちゃんの前では可愛くありたい。
4月に入ったとは言えまだ夕方は肌寒い。
スプリングコートを羽織ると楓ちゃんの到着を待つ。

【あと5分で家に着く】

そうメッセージが届いた。
私は荷物を持つとリビングにいるお母さんに楓ちゃんと出かけてくると伝え、外に出た。
ちょうど楓ちゃんの車が角を曲がってくるのが見えた。

昨日の今日で気まずいが運転席に座る楓ちゃんの顔も固い気がする。
家の前に車が停まると私は助手席のドアを開け乗りこんだ。
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