幼なじみが愛をささやくようになるまで〜横取りなんてさせてたまるか〜

未来に向けて

「ひまり!」

「楓ちゃーん、遅くなってごめんね」

私たちは改めてデートの約束をした。
この前お互いの気持ちを確認しあった。
その後からずっとメッセージのやり取りはしていたけれどなかなか休みが合わず3週間が経ってしまった。
ゴールデンウィーク直前の金曜、土曜で私は連休が取れた。
楓ちゃんは同じ休みを取るために仕事を調整してくれ、なんとか同じ休みをもぎ取ってきてくれた。

実は初めてのデートだけどなかなか会えなかったのでお泊まりの予定。
私はそのことを考えるだけで頭がパンクしそうになる。
どうしよう。
でも楓ちゃんと一緒にいたい。
その一心でお泊まりを決めた。

行き先は新幹線で金沢に行くことにした。
東京駅でちゃんと待ち合わせをするが色々考えていたら遅くなってしまった。

やっと待ち合わせに着くと楓ちゃんはすぐに私の荷物を持ってくれ、肩に担ぐともう片手で私の手を握り走るように新幹線に乗り込んだ。

軽く息を切らしながら座席に着くと楓ちゃんは笑いだした。

「ひまりはやっぱりひまりだな。緊張がほぐれたよ」

「もう! 私だって大人になったの。でも、今日はちょっと遅れただけ。意地悪言わないでよ」

笑いながら私の手を握りしめた。

「楽しい旅行にしような」

「うん」

新幹線の中でガイドブックを見ながら行き先を決めた。

まずは2人で和装に着替えるとそこで荷物を預かってもらい出かけることにした。
楓ちゃんが思いのほか和装が似合っていてビックリ。着てもらわなければ良かった。
楓ちゃんは周りにいる女の人からすごく見られてる。
またため息が出てしまいそうになっていると私の肩を抱き耳元で「可愛いな」と囁いてくれた。
私は顔が熱くなるのを感じた。
また耳元で「可愛すぎてどうしたらいいんだろう。みんなに見せたくない」と囁く。

楓ちゃんはいつも私に囁いてくれるけど、その度にドキドキさせられてるって分かってるのかな?
恥ずかしくなって俯いていると耳元にチュッとキスをされた。

「あ……」

周りの女の人たちの声が漏れ聞こえた。
まさか私が楓ちゃんの相手だなんて驚きだよね。
つい楓ちゃんの隣に並ぶことに自信のない私は楓ちゃんを押し返してしまいそうになった。するとそれを見越していたかのように私の腰をグッと引き寄せてきた。

「ひまり。俺はひまりと離れるつもりはないって言ったよな? 腕の中から逃さないよ」

笑いながらそう言うと今度はおでこにチュッとされた。

「もう!」

私が恥ずかしいのを隠すように怒った表情を見せると笑いながら歩き始めた。

ずっと楓ちゃんは私のことを抱き寄せたまま散策をする。茶屋街をまわり、私のお目当ての美術館、兼六園とぐるりと回った。
ふたりで金箔のついたソフトクリームも食べた。
こんなに楽しい旅行は初めてだった。

着替えると旅館へ向かうが予約を任せていたのでどこなのか知らなかったがタクシーが到着すると驚いてしまった。
門をくぐると仲居さんたちが並んでいてタクシーが着くと揃って頭を下げていた。
泊まったことがないような格式高い旅館だった。
立派な庭園が目に入り、すぐに荷物を持ってくれるとフロントへ案内された。
チェックインしている間、私はロビーで待たされるがすぐに抹茶が運ばれてきた。庭園を見ながら飲むと優雅な気持ちになり、一緒に出された和菓子もとてもおいしかった。

「ひまり、おまたせ」

「うん。楓ちゃん、すごく美味しいよ。頂いてみて」

「ああ」

楓ちゃんもロビーに腰を下ろすと一緒に庭園を見ながらゆっくりお茶を飲んだ。

「いいね。なんか優雅だね」

「あぁ。本当に」

飲み終わるのを見計らって仲居さんがやってきて部屋を案内してくれた。
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