復活の村
しかしヒトミはその場から動こうとしなかった。


じっと森の小道を見つめている。


いや、その目はあの池を見ているように感じられて、胸騒ぎがした。


「帰るよヒトミ」


「いや。私はこの奥に行く」


ヒトミはそう言うと僕の手を振り払って歩き出した。


「ヒトミ!」


慌ててその後を追いかける。


できればもう二度とあの池には行きたくなかった。


1度もヒトミが沈んだあの池は、僕にとって絶望の塊でしかない。


「おい、戻るぞ」


ヒトミの腕を掴んで強引に自分の方へ引き寄せる。


普段なら少し力を込めればすぐにヒトミの体はぐらついた。


そのくらい頼りない存在だった。
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