復活の村
2人共なにも言わずにただ湖面を見つめ続ける。


風もないため湖面では小さな揺れもない。


水草がはびこり今見ればよくこんな池にボートで乗り出したものだと自分で自分を感心してしまう。


いや、あのときの僕はまだ何も知らなかったんだ。


この池に本当に死者を浮かべること。


その死者が戻ってくること。


それが本当のことだということ。


すべてを知った今だからこそ、池は禍々しいものとして僕の目に映るようになった。


もう戻ろう。

そう言おうとしたときだった。


「ねぇ」


ヒトミがジッと湖面を見つめたまま言った。
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