復活の村
食器棚が倒れ、皿やカップが割れて散乱し、誰かがケガをしたのか所々に血がついている。


「ヒトミ?」


声をかけてみたけれど、ほとんど音として出ていなかった。


喉が張り付いてしまったかのうように声が出てこない。


それが恐怖のせいだとしばらくしてから気がついた。


「やめて!!」


悲鳴が隣の部屋から聞こえてきてハッと息を飲む。


僕が隣の部屋へ視線を向けるより早く、神主さんが廊下へ走っていた。


僕たちもそれに続く。


神主さんが大きくふすまをあけた瞬間、血の匂いが濃厚になった。


鼻の奥まで突き刺さるような鉄の匂いに吐き気がこみ上げてくる。


叫び声の主をさがして部屋の中を確認すると、ヒトミが母親の首に包丁を押し当てているのが目に入った。


母親の体は横倒しに倒れ、ヒトミはその上に馬乗りになっているのだ。
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