復活の村
購入するときにヒトミはいたずらっ子のような視線を僕へ向けてそう説明した。


さすがに自販機くらい他にあるだろうから嘘をついたなと思ったけれど、昨日から1台も見かけていないことを思い出す。


「本当に、村唯一の自販機なのか?」


「だからそう言ったでしょう? 神社には普段からお参りする人たちがいるから、設置したんだって」


「ふぅん」


そこまで徹底してなにもないのだと、改めて驚いた。


それから僕たちは他愛のない会話をしながら足を進め、森の入口へとやってきていた。


その森は村の中では一番大きな森で、中へ入っていくための小道はひとつしかなかった。


「この中に池があるの。だけど本当にただの池だから、見てもつまらないよ?」


ヒトミは小道へ入る直前までそう言っていた。


僕を池からと遠ざけたがっているように感られて、余計に好奇心がくすぐられた。


「行ってみよう」


僕はヒトミの手を握りしめて歩き出したのだった。
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