無理、俺にして
プロローグ
「いい?ゆめ」

幼い頃、母は赤く腫れた目で言った。


「男なんて信じちゃダメよ、絶対に仲良くしちゃだめ」

「どうして? 同じ組のあっくん優しいよ?」

「優しいのは最初だけ。仲良くなってきたら本当の怖い部分がみえちゃうんだから」


空になったティッシュの箱をぎゅっと握りしめる母。


「うん、わかったよお母さん」


“男の子とは仲良くしちゃだめ”


母のその言葉よりも

その言葉を発している母の姿の方が強く脳裏にこびりついていて。



仲良くしたら、お母さんが傷ついちゃうんだね。


それなら私は。



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