無理、俺にして
「で? オリくんたちの練習ずーっと見ちゃって、どしたん?」

「あ、いえその……」


折原くんはいつもからかう時にこうして顔をのぞき込んでくる。
前髪が汗で濡れてるせいで、目がいつもよりちゃんと見えすぎて、恥ずかしい。

恥ずかしくて、ちゃんと見たいのに、見れない。


「オリ、近すぎ」

「キャー」


後ろからぐいっと引っ張られてしまった折原くんは、棒読みで女の子のような声をあげてケタケタ笑った。
あっくんはそんな折原くんを見て、はあ……とため息をつく。


「ゆめちゃん、帰るならゆめちゃんも教室一緒に行こ?」

「あ、うん……私はいいけど……」

「?」


私の後ろにいるふみちゃんをそっと見るも、「無理無理無理無理」と目でうったえられる。

確かに、ふみちゃんの足はガクガク震えていてさすがに限界そうだった。


「あの、私たち後でゆっくり向かうよ、練習お疲れ様でした」

「そう? じゃあ先に行くね」

「うん、また明日ね」

「ばいなら」


ひらひらと手を振り、二人は先に校舎の方へと向かって行ってしまった。


「……っはああ~……!!」

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