無理、俺にして
*紫乃side*

赤組が毎年最強と言われているのは、単に先生達の人選ミスが原因なんだと思う。


「……っぶな……」


顔の火照りを
いつもより早くなっている鼓動を
誰にも気づかれないように。

赤組の待機場所まで戻った俺は、いつも通りのテンションで声をかけた。


「戻ったなり」

「おせーよオリー!!」

「聞けよ、フジちゃんがさ、あれだけ張り切ってたのにパン食い競争負けてやんの」

「ぶはっ」


フジこと藤沢 凱(ふじさわ がい)が隅で大人しく体育座りをしている。

なるほど、パン食い競走に対して気合いが入っていたのに2位とか。

おもしろすぎるでしょ、どんまい。


「俺の伝説がぁーっ!! なんでやーっ!!」

「まあ元気だせよ、フジちゃんの無念はこの俺が次の後ろ向き競争で晴らしてやる」

「ええ、たっつんどうせこけるだろ」

「そのままズボン脱げたりして」

「お前ら?? 女子の前ぞ??」


たっつんこと小池 達則(こいけ たつのり)が
わざとらしくタオルを目元に当てて
大げさに泣き真似をして見せる。

秋音はそれを見て爆笑していた。

つられそう。

秋音や、他のよく一緒にいる連中がこんなにそろって一緒に赤組なのはどう考えてもおかしいだろう。

おまけに、それぞれ運動だってできるほうだ。
休みという休みを走り回って過ごす俺たちにとって、体育祭は公認で暴れられる場。


練習を重ねる中で他の学年を見ても、女子を含めて運動ができる奴らしかいない。

そんなの、強くないわけがない。


……し、楽しくないわけもない。


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