無理、俺にして
折原くんの次の言葉を待っていると、頭上からくふっと笑うのが聞こえる。
「そんなに俺の匂いが好きなら、匂い袋の一つでも作ってやりたいわー」
「え、えっ」
思わず顔を上げた。
匂い袋!? 欲しいっ!!
じゃ、じゃなくて、そうじゃなくって!!
「あ、あの、私が好きなのは折原くんの匂いじゃな……いや、匂いも好きなんだけど、えっと」
そうなんだけど、そうじゃないの、違うの。
誤解を解いてちゃんと伝えようと、顔を上げた時。
「……っ」
折原くんの顔がぐっと近づいてくる。
――……あ。
“教室のカーテンに隠れて”……。
ふと、ノートに書いた内容のうちの一つを思い出した。
キスされる。
あんなに頭がぐるぐるしてたのに、何故かこんなに冷静でいられて。
この一瞬で理解した私は、折原くんに身を任せるようにしてそっと目を閉じた。