無理、俺にして
「……?」


しかし、いつまで経っても唇に想像していた感触はなくて。

おかしいと思ってゆっくり目を開けると。


「……っ、ぶ、……っ!!」

「なっ……!!」


折原くんは口元を押さえながら、こらえきれていない声を出して笑っていた。
私の視線に気付いて、「あーおかし……」と言いながら笑顔で続ける。


「されると思った? キス」

「……っ、う」


「うん」と言ってしまいそうなところで口を閉じた。
からかわれすぎて、ちょっと悔しい、から。


「でも『カーテンに隠れて』ってところはクリアじゃん」

「や、やっぱり、それ……っ!!」


やっぱりノートに書いてあることしようとしてたんだ!!という気持ちと
キスされなくてちょっと悲しい気持ちで
なんて言葉にしたら分からなくてその先は何も言えなかった。

そんな私を見た折原くんは、笑いすぎて滲んだ涙をそっと指でこすりながら、
何かをひらめいたように「あ」と私を見た。


「それ、俺につけて」

「……え?」


折原くんの言う、「それ」とは。

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