無理、俺にして
一瞬何のことか分からなくて首を傾げると、折原くんの手が伸びてくる。

そして、パチンという音と共に、前髪がパサリと視界に入ってきた。


「こーれ」

「あ、ヘアピン……?」

「そう。俺につけて?」


私より少し低い位置に頭が来るようにかがんで、上目遣いでニヤリと笑う。
見たことのないアングルに、一瞬ふらっとめまいがした。

ふみちゃん風に言えば、「尊い」。


「この辺でいいかな……?」

「どこでもいーよ」


折原くんの髪に指を通す。
サラサラしててすごく綺麗。

右耳に髪の毛をかけて、そこをヘアピンでパチンととめた。


「で、できたよ」

「ありがと」


かがんでいた体を起こして、またいつものアングルに戻る。
下から見上げる折原くんもやっぱりかっこいい。けど。


「……似合う?」

「うんっ、うんっ!!」


耳に髪をかけているのも、大きな星がついたヘアピンも。
かわいくてかっこよくて。


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