無理、俺にして
「ゆめちゃん……!!」

「っ!?」


強引に腕を引っ張り、ゆめちゃんをぎゅっと抱きしめた。



そう思うなら、なんでそれ着てるの。

なんでオリにヘアピンなんか渡したの。

オリが言ってた協力関係ってなんなの。

オリに、どんなゆめちゃんを見せたの。


どうして俺じゃなくて、オリなの。


いやだ、いやだ。

屋上での出来事を思い出す。

あの日、オリの足に頭を乗せて、オリのワイシャツを羽織って。
気持ちよさそうに眠っているゆめちゃん。

大切そうにそのワイシャツを持ち帰るゆめちゃん。

顔を赤くしながらオリの話をするゆめちゃん。


「あ、あっくん……どうしたの……!?」


……面倒くさいのはどっちだよ。
完璧、俺じゃん。

女々しい分余計に俺のがめんどかったわ。


「……っ」


どんどん腕に力が入る。


無理。

……無理。


オリでも、他の誰でも、この子を渡したくない。


絶対に、無理だ。


細くて小さいゆめちゃんを抱きしめたのは、これが初めてだった。
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