無理、俺にして
「……っ」


ずるいよ、泣くなんて。

折原くんの言葉が私の頭の中を駆け巡った。

きっと、あっくんの私に対するこの気持ちを、私に知らせようとしてくれていたんだと、今更になって気付いた。

……遅すぎるよ、私。


ちゃんと考えたつもりだった。

けど、隣にいるのが当たり前だったから、それ以上の考えになることなんてなかった。


あっくんの優しさを「優しい」ととらえるだけで
「どうして優しくしてくれるのか」ってところまで考えることができなかった。

私が折原くんを想っているみたいに
あっくんも私の事を想ってくれていたんだ。


好きな人がこっちを見てくれなくても
何も言わずに傍にいてくれたんだ。


「……っありがとう、あっくん」


でも、私。

私……。


私を抱きしめる力はどんどん強くなっていく一方で。

苦しくて痛くて、いよいよ呼吸がしづらくなってきた。

でも、あっくんが感じていた痛みはこんなものじゃないんだろうなって。


そう思ったらやっぱり「離して」なんて言えるわけないよ。

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