無理、俺にして

止まらない鼻血をティッシュで押さえながらも、
私の手をつかんで離さないふみちゃん。


「ふみちゃん、早く行って早く休めば早く戻ってこられると思うから、とりあえず保健室で鼻血止めておいで……」


その手をそっと離すと、保健室の先生がやれやれといったようにため息をついて
ふみちゃんの手をにぎって校舎の方へ向かう。


「はい、音原さんの言うとおりよ。歩けるうちに早く行きましょう」

「ゆめちゃん……!!」

「はいっ!?」


やっと諦めたかと思ったのに、ふみちゃんは反対の手でガシッと私の肩をつかむ。


「私の分も、ちゃんと見ててね」

「え……」

「応援合戦……赤組の演舞、私が戻らなかったときのために、ちゃんとゆめちゃんが見ててね」

「いい加減にしなさい、早く行くわよ」


保健の先生に半ば強引に連れて行かれるふみちゃん。


「絶対だよ、ゆめちゃん……!!」

「わかった、わかったからちゃんと休んでね!!」


私の言葉を聞いて、やっと大人しく保健室へ向かって足を進めるふみちゃん。

よっぽど見たかったんだろうなあ。

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