無理、俺にして

「っ」


手をつかまれ、そのまますごい強さで引っ張られる。

前を走るその人の襟足は青く染まっていて、見慣れた姿に少し安心した。


人混みをかいくぐって、生徒玄関に向かう途中に波から抜け出す。
そうしてたどり着いたのが、校舎裏の非常階段。


「だいじょぶ? 息とか」


ここまで一気に走ってきた私を気遣うように
振り返って首を傾げてそう聞いてくる折原くん。

その動作一つ一つを追いかけるようにひらひらと舞う襷が、折原くんのかっこよさを余計に際立たせるから。


「う、ん……!!」


下を向く。
だって、かっこよすぎて直視できない。


「よしゃ、あとちょっとでボス戦前のセーブポイントだから、それまで生きろー」

「ふふ、なにそれ」

「いーから、おいで」


くいっと優しく手を引っ張られて、階段をのぼっていく。

……そういえば、ここの階段って登ったことがなかったけど、どこに繋がってるのかな。


折原くんは、本当に学校のいろんな場所を知っていて
どれだけの彼の寝床があるんだろうなんて考えてしまった。

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