無理、俺にして
階段を上りきった先に、鍵の閉まっているドアが私たちの前に立ちふさがる。
でも折原くんはしたり顔でお手製の針金でつくった鍵を取り出し、本当に開けてしまった。
「あ、ここに繋がってたんだ……!!」
「そーそー」
入った先は、最上階の廊下。
ここを少し進むと屋上に向かう階段が見える。
何度も屋上に通っている私にとっては、角度こそ違えど見慣れた景色。
冒険しているみたいでドキドキしていたけど、やっと知っている道に出て少しほっとした。
「ほら、いくよ」
「う、うん」
もう一度手を繋がれて、屋上に向かって歩みを進めた。
「……やっぱ、やめ」
「?」
てっきり屋上に向かうのかと思って階段を上ろうとしたとき、そう言って折原くんが立ち止まった。
私からそっと手を離すとまた針金の鍵を取り出して、
あの空き教室の鍵を慣れた手つきで開けてしまった。
「屋上だと、邪魔が入るとみた」
「……」
「……フラグは立てないのが、吉」
私の顔を見ずに空き教室のドアを開ける折原くん。
それが照れているように見えて、くすりと笑ってしまった。
「失礼します」
緊張しながら、私は折原くんの後で空き教室に入った。