無理、俺にして

聞こえなかった、なんてことあるはずないよね。

理解できなかった、はありえるけど……。

待って、だめでしょ、ありえないよね?


「っ」


腰にまわされた折原くんの腕が、そのままぎゅうっと自分の体に引き寄せるように抱きしめてきた。


「……ちゃんと、考えた?」


肩に埋められて少しこもった声に、私はうなずいてこたえる。
考えましたとも。

今度こそ。

めっちゃ、真剣に。


「だからこそ、今日の体育祭……演舞なんかは特に、折原くんにしか目が行かなくて大変でした、えへへ」


みっともない、だらしない顔をしている自信がある。

だってこんなに好きで好きでしょうがない。


「……まじかー……」


大きく息を吐いて、すり……と頬を肩にすり寄せる折原くんは、まるで猫かなにかみたいだ。


「俺、今ガチで喜んでるっぽい」

「っ」


うれしさが混じるその声に、私もうれしくなった。

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